ちょうど今から50年前に父が語って聞かせたこの言葉は、
それ以来ずっと私の座右の銘となっている。
父は医者だった。
当時、ブダペスト大学で法律学を学び始めたばかりの私は、
運悪く試験の一つに落ち、
恥ずかしさのあまり、
ついこんなときの一番の慰めになる「酒」に手をつけた。
正確に言えば、アプリコット・ブランディーである。
そこへ思いがけず父が訪れた。
さすが名医である。
一瞬のうちに私の悩みと、棚に隠した酒の瓶をみつけてしまった。
私は現実逃避に追い込まれた理由を告白した。
愛すべき老人はたちどころに一服の名薬を調合した。
酒、睡眠薬、その他どんな薬品にしろ、
そんなもので本当に現実から逃避できるものではない。
悲しみを癒す薬は、この世にたった一つしかない。
しかもそれは一番よく効いて一番安全な薬だ。
それは「勤勉」という薬だ!
父の言った通りだった。
最初のうちはちょっとこの薬には慣れにくいかもしれないが、
遅かれ早かれ人間は勤勉になる。
勤勉は一種の麻薬である。
習慣になる。
いったん習慣化したら、もはや抜け出せなくなる。
私は勤勉を愛する習慣から、50年間抜け出すことができなかった。
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